デュアルEDS検出器を用いたイラクサの元素分析

植物は純粋な無機物や有機/無機複合体などさまざまなバイオミネラル (生体鉱物)を作り出します。これらのバイオミネラルは構造上重要な役割を持ち、植物の構造がどのようにその機能や周囲の環境と関係しているのかを理解する手掛かりとなります。

植物試料中のバイオミネラルの組成と分布は、SEM-EDSスペクトルとマッピングによって明らかになります。しかし、これらの試料は電子線ダメージを受けやすく複雑な形状をもっているためにSEMでの分析は困難でした。1台のEDS検出器のみを使用する分析では高いビーム電流が必要となり、試料ダメージや電子ビームの安定性が問題になっていました。

これらの問題は2台のXFlash 760検出器を使用し、低加速電圧・低ビーム電流で測定することで回避することができます。

この例ではイラクサの毛状突起を2台のXFlash 760検出器を使用し、加速電圧 6 kV、プローブ電流 800 pAの条件で分析しています。この結果では、Si・Ca・Mgの元素分布を示しており、3種のバイオミネラルがイラクサの単細胞毛状突起にわたって分布していることがわかります。

毛状突起の基部と先端部に分布している二酸化ケイ素は組織に硬さを与え、同時に壊れやすくなっています。CaとMgの無機鉱物は毛状突起の中央付近に集まり、組織にしなやかさを与えています。

イラクサのSEM-EDS元素分布。2台のXFlash 760検出器を使用することでチャージアップ、シャドーイング、カウントレート不足を回避しています。
イラクサの毛状突起のハイパーマップ (測定範囲 : 80 µm x 25 µm)と各測定点でのスペクトル。Si(赤)は毛状突起の先端部と基部に多く分布し、Ca(青)とMg(黄)は中央付近に多く分布しています。EDSスペクトルにより3種のバイオミネラルの存在が確認できます。毛状突起の先端部と基部はSiリッチなバイオミネラルを含み、二酸化ケイ素は組織を硬さを与え、同時に壊れやすくなります。残りの部分はCaとMgを多く含み、組織にしなやかさを与えています。